江戸時代に創業し、蔵は200年以上の歴史を持つという老舗酒造、松葉屋本店。先祖代々受け継がれる伝統的な日本酒を造る一方、現在は地元小布施町で、スポーツコミュニティセンターの運営も幅広く行っています。今回は新しいことにも挑戦し続ける、松葉屋本店の14代目当主、市川博之さんにお話を伺いました。
松代藩御用達の日本酒
松葉屋本店は江戸期には代々松代藩御用達の地酒を納めていた由緒正しい酒蔵です。主な銘柄は“北信流”と“本吉乃川”。純米大吟醸、純米吟醸、生酒等々、全24種に加え、ブレンドやサイズ違いも含めると130種類ものお酒造りを杜氏1名、蔵人3名の4人で行っています。
こだわりの日本酒造り
酒米は長野県産金紋錦を使用し長野県産にこだわった酒造りをしている松葉屋本店。酒造りに欠かせない水は、店の地下から汲み上げた「中硬水」を使っています。地下から汲み上げた水には様々なミネラル成分が含まれるため、コクのある、ずっしりとした飲み心地のお酒になるそうです。
そして松葉屋本店で特徴的なのが、熟成生酒。一般的に生酒は冷蔵保存が必要と言われていますが、松葉屋本店は、その生酒を常温で長期熟成したものも販売しています。中硬水で仕込んだお酒を常温で熟成させると独特な旨みが乗り、味に幅のある松葉屋本店ならではのお酒になります。「人がしていない事をしてみよう」というチャレンジ精神から始めた酒造りです。
地域と酒蔵で深いつながり
古い歴史を持つ松葉屋本店の酒蔵は、土蔵造りという伝統的な建築様式で建てられています。土蔵は昔、不況対策として地域住民の雇用のために使われていました。農作物が不作だった年に、栄えている酒蔵が土蔵の建築に農民を従事させることで生活を助けていたといいます。当時から酒蔵は、地域の人々と深い絆でつながっていました。市川さんはその深い繋がりを、今も大切にしています。
「小布施」の老舗蔵として取り組む街づくり
市川さんは現在、スポーツコミュニティセンター「小布施オープンオアシス」の運営も行っています。この施設では、ボルダリングなどのスポーツを通して、地域の人々が自由に交流できる場所を提供しています。現代の日本の課題でもある高齢化社会は、ここ、小布施でも深刻な問題となっています。世代間の格差や断絶が進み、交流の機会が減りました。そこで、それぞれの年代が自然に交流し、よりよい関係性を築く機会を作るために、この施設が誕生しました。今では老若男女、様々な世代が集まるコミュニケーションの場として、地域住民に愛されています。酒造りとスポーツ施設の運営。全く違うジャンルに見えますが、地域還元という昔からの酒蔵の存在意義が、ここに生きています。
小布施の町を世界に
日本酒だけでは海外から注目されにくい。和食など、日本文化があって初めて注目される。小布施には、発酵食品やワインなど、日本ブランドを伝える老舗企業がたくさんあります。だからこそ、分野を超えて様々な地元業界と手を組んでいきたいと語ってくれました。「地元を潤わせたいという気持ちはみんな一緒。ジャンルを超えて協力し合い、小布施から日本文化を世界に広げていきたい。」と市川さんはいいます。
元気な発酵人!
酒蔵の店主でありながら、スポーツコミュニティセンターの運営を行う市川さん。全国からの観光客で賑わう「小布施」の老舗蔵として、酒造りと街づくりに務める元気な発酵人です!