伝統的な味噌・醤油の製造販売を行う三原屋の創業は嘉永元年(1848)。様々な時代を経て愛され続ける三原屋での食品製造に関して、その魅力や理念を三原屋6代目店主の河原清隆さんに伺いました。
伝統的な方法での醤油製造について
三原屋で作られているのは伝統的な「火入れ醤油」。「火入れ」は醤油の保存性を良くし、加熱処理を施すことで香りを最大限に引き出すことのできる伝統的な製造方法です。近年は火入れを除いた生醤油が市販される機会も増えましたが、職人が手間ひまかけて行う火入れの工程が、三原屋の香り深い醤油を生み出します。
職人ならではの味
火入れの技術は奥深く、醤油職人がその生涯をかけて道を究めるに値するほど。「火入れができる職人は200人位しかいない」と河原さんは話します。時間を掛けて丁寧に行う製造工程の中でも、最後に行う火入れは特に難しく、毎回全く同じ醤油を作るのは不可能だそう。機械化に伴い大量生産された市販の醤油と異なり、経験豊かな職人の感性をもとに作られる三原屋の伝統的な醤油は、独自の深い風味と釜ごとに絶妙に異なる個性が特徴です。
種類豊富な醤油
三原屋では種類豊富な醤油の製造・販売が行われており、中でも“減塩”や“薄口”に焦点を置いた商品の展開が目立ちます。特色のある商品といえば「コアラのしょうゆ」。可愛らしい商品名は、「お母さんとこども」の姿をイメージして命名されたそう。醤油のうま味がダシのようで、薄口でも香りがしっかりしているのがこの商品の特徴です。優しい味わいのこの醤油は、離乳食にも使えるほか、子どもやお年寄りでも食べやすい商品として人気だそうです。
店主の河原さんの想い
店主の河原さんは、家業を継がれる以前は製薬会社で栄養剤の研究をされていました。専門的な知識やお考えを持った河原さんは「現代人の食事は“宇宙食”のようだ。」とも語ります。徹底的な衛生管理が行われた環境下での食品製造は、微生物や多様な菌が混入があってはならない、これが現代の考え方ですが、元来人間は、様様な細菌と共に生きてきました。衛生管理が徹底された工場で生産される食品を口にすることが多い現代の人々の腸内細菌は弱体化しているといいます。だからこそ発酵食品を取り入れることが必要。様々な菌を含む発酵食品は、人間の免疫力を高めるのに大変効果的です。
元気な発酵人!
製薬会社で研究をされていたご自身の経験を活かし、お醤油作りに励む、店主の河原さん。「受け継がれる生産技術を後世に伝えていきたい」「発酵食に関する情報を発信していきたい」と将来の展望についても教えてくださいました。